熟年夫婦の在宅介護生活365日「胃ろう・気管切開・嚥下マヒ・糖尿病・認知症・」心臓は生体弁・人工血管・脾臓は摘出・それでも人生は一度限り・100才を目標に生きていきます。

日本百名山を完登したけれど・寝たきり要介護5の妻を介護しながら夫の寺ちゃんが描く、子供時代と青春時代、そして今。

作品№6 お父さんの得意技(12/8)

お父さんは 空襲で 家を 焼かれて

何もかも 失ったけれど

家族(お母さん 兄弟4人)を 守る為に

焼け跡に 燃え残りの柱 拾ってきたトタン 

漬物石 で バラックと言う 家を 建てた

便所は 家の外 大きい瓶(かめ)の上に 板が 渡してある

落ちたら おしまい うんち は お尻が 寒かった

 

お父さんの収入源は 決まっていない

米は お母さんの実家から おじいちゃん おばあちゃんが

リヤカーで 野菜とか 味噌とか と一緒に 持ってくる

お母さんの実家は 農家 お母さんは お父さんに 惚れて

「あの男(ひと)と一緒になるの」って 駄々 こねたらしい

 

お父さんは 都都逸(どどいつ) とか 義太夫(ぎだゆう)とか

遊び人 仲間も いて あちこちの 町の舞台で 「うなって」

いたらしい 「いい声」しているねえ と言われて 得意だった

良い男で もてたらしい 昔の写真見ると その通りだった

 

お父さんは 家でも 鼻歌まじりで うなる時がある

とっても いい声で 近所の人が 集まってくるほどだ

お母さんは そんな お父さんが 大好き~

ちなみに お母さんは お父さんより 一回り 体格がいい

 

お父さんの得意技は「鶏(にわとり)の解体」包丁も いいの持っている

近所から「健さん おねがいね」と言われると 新聞紙とマッチと鍋と

包丁と手ぬぐい 持って 僕の手 引いて そこの「おねがいね」の

年増の女の家に 行く

そこの家の鶏を「しめて」お肉は そこの家に 残りは 貰ってくる

手間賃は無い 気風の良さが 売り物だから お金は貰わないのだ

 

早速 鶏がらのだしの 美味しい 煮物が 作られる

鶏の肝とか 皮とか 何でも はいっていて みんなで

わいわい いいながら ご飯と食べた

お父さんは 和風 洋風 なんでも 調理が得意だった

僕は お母さんも お父さんも 大好きだった。