熟年夫婦の在宅介護生活365日「胃ろう・気管切開・嚥下マヒ・糖尿病・認知症・」心臓は生体弁・人工血管・脾臓は摘出・それでも人生は一度限り・100才を目標に生きていきます。

日本百名山を完登したけれど・寝たきり要介護5の妻を介護しながら夫の寺ちゃんが描く、子供時代と青春時代、そして今。

作品№11 川崎大師の東映映画館

お母さんが 弟の善ちゃん おぶって 歩く

おぶい紐の脇から 白い足が 揺れる

僕は お母さんの隣を歩く

時々 手を 繋いでくれる

 

お母さんの顔は 真っ赤

汗が おでこ で 光っている

黙りこくって ひたすら 歩く

東映に いくからな」

確かに そう 言った

 

そう言えば 僕の家

トタン屋根の家の中には 

隙間風対策の為に 東映のポスターが

一杯 貼ってある 

 

高田幸吉 の時代劇のとか

長谷川一夫のとか

とにかく 映画館で上映する

宣伝ポスターが 一杯 貼ってあった

 

何時間 歩いたろうか

気が付いたら 僕は 東映映画館の中にいた

イスに腰掛けて お姉さんがくれた アイスクリームを

ひたすら 頬ばっていた

生れてはじめて 冷房を知った

 

お父さんの知り合いの奥さんの長女が

そこの映画館に 勤めていて

ポスターも 持ってきてくれる

優待券も 時々 くれる

優待券は ポスターを 貼る タバコ店とか

食道とか 駅とか の人に あげるもの

時々 あまるので それを くれる

 

お母さんは 高田幸吉が 大好き

僕は そんな お母さんが 大好きだった。