熟年夫婦の在宅介護生活365日「胃ろう・気管切開・嚥下マヒ・糖尿病・認知症・」心臓は生体弁・人工血管・脾臓は摘出・それでも人生は一度限り・100才を目標に生きていきます。

日本百名山を完登したけれど・寝たきり要介護5の妻を介護しながら夫の寺ちゃんが描く、子供時代と青春時代、そして今。

作品№13 入学

トタン屋根のバラックから

お母さんに 連れられて 歩いた

お母さんは 家が バラックなのに

とっても 貧乏なのに

お父さんは戦争のお陰で 仕事 無くなったのに

家には お金がないのに 着飾っていた

どこかの 金持ちの奥様みたいだった

和服で 草履で 歩きにくそうだった

 

お母さんの実家は 農業している

徳川時代から 先祖から 脈々と 農業

お母さんの両親は 朝早くから夜遅くに

多摩川沿い 広大な 農業地で仕事している

腰が曲がっていた

僕からみると おじいちゃん おばあちゃん

「じい」「ばば」と呼ぶと 皺だらけの顔で笑った

 

お母さんの 晴れ姿と つぎはぎだらけのズボン姿の僕

小学校は 木造で 大きかった

玄関では 大勢の先生とか 関係者が 

新入生に「おはようございます」と挨拶してくれた

案内された教室の木の机 木の椅子 

僕は校庭の見える 明るい窓の近くだった

 

丸顔の目のくりくりした女の先生が

ひとりづつ 名前を呼び ニッコリ微笑み うなずいた

〇〇くん と僕も呼ばれた 恥ずかしかった

黙っていたら うしろのほうから「はい」とお母さんが返事した

みんなが 笑った 僕も 一緒になって 笑った

お母さんと目と目があった やさしい目だった。