熟年夫婦の在宅介護生活365日「胃ろう・気管切開・嚥下マヒ・糖尿病・認知症・」心臓は生体弁・人工血管・脾臓は摘出・それでも人生は一度限り・100才を目標に生きていきます。

日本百名山を完登したけれど・寝たきり要介護5の妻を介護しながら夫の寺ちゃんが描く、子供時代と青春時代、そして今。

作品№18 新聞配達少年

僕は 夕刊を配達する

新聞少年と 呼ばれていた

朝刊は 午前4時だ

兄は 朝刊

僕は 夕刊

夕焼けが 真っ赤に染まるころ

あちこちから流れる 

「エイヤー 僕の名前は 赤胴鈴之助だ~」

これ ききながら 走った

日が暮れるまでに 終わらないと

暗くなると 犬が 吠えて 怖かった

 

「はあい ゆうかんで~す」

小学生の僕 は 肩に食い込む

新聞の束が 軽く なっていくのを

感じながら 玄関から 投げる

「ゆうかんで~す」

全部 終わると 新聞帯を

クルクル まるめて

回しながら お店に 帰った

 

お店の奥さんが 白い割烹着で

僕の頭を 撫でながら

でっかい 焼き芋 熱いのを

「アツアツ」 って 半分 くれた

フーフー 喰いながら 住宅地を

小走りに 駆け帰った

「お母さん 帰ったよ」

くちのまわりに 残った 焼き芋のカスを 舐めた。