熟年夫婦の在宅介護生活365日「胃ろう・気管切開・嚥下マヒ・糖尿病・認知症・」心臓は生体弁・人工血管・脾臓は摘出・それでも人生は一度限り・100才を目標に生きていきます。

日本百名山を完登したけれど・寝たきり要介護5の妻を介護しながら夫の寺ちゃんが描く、子供時代と青春時代、そして今。

№36  20才の女の子は逝ってしまった 虹の橋へ

「猫 拾ってきたの 飼っていいでしょ」娘の久美子が 全身 ずぶ濡れのまま 帰宅して 玄関で 両腕の中で ニャーニャーか細く 鳴きやまない 子猫を 見せて くれた 「うん いいよ」 今更 何も 言うことはない 学校の帰り道 友達と国道の歩道を 傘さして 歩いていたら 国道に向かって 大雨の中を 車の列に 向かって ヨタヨタ いく ところ 拾ったとのこと これも 何かの縁か と思った。

 結局 仕事の合間に 砂場のトイレとか 猫缶詰とか ブラシかけ とか 父親の俺が やらねば ならなかった 猫のウンチは 良い香りとは言えない けれど仕方ない 久美子は 「ミーちゃん おいで」って 抱き上げる 二人とも 嬉しそうだ 雌のキジトラ種 瞳が くりくり して ヒゲが ヒクヒク 動く 大きくなるのも早い 何年かの春 突然 発情した ゴロゴロ ニャンニャン 家の中 回り始めた 日増しに 発情の度合いが 強く大きくなったので 獣医さんのところに 連れていった 麻酔 効かせて 「はい 終わりました」と言われた 一万円 とられたけれど 仕方ない それ以来 おとなしくなった 猫乙女が 少し 可哀そうになった。

 久美子が 男と知り合い 妊娠した 男の子 出産した 我が家で ミルク飲ませて 大きくなるまで 育てると言う 「ね お願い」そう 言われると 断れない 「いいよ」って言った 猫の毛が ミルクに はいるのでしばらく 猫を ペットホテルに 預けることにしたけれど 一日五千円 とられた それに 一人に しておくの 可哀そうなので 「しばらく 俺の車で生活するわ いいね」って 久美子に言った。そのころ 久美子は母子家庭の申請を役所にだしていた。  男はパチンコで 借金を作り 一千万近くのお金を 沢山のサラ金から 借りまくっていた 仕事は 大手の自動車製造会社の社員だったけれど 結局 彼の実家の母親が その母親の親から だしてもらって 事なきを得たが 弁護士 いれて 離婚したのは 男の子の親権を 向こうに 持っていかれるの 阻止 するためだった 俺に とっては 全財産を 継承してくれる 唯一の男の子だ 向こうも必死に 弁護士たてて きたが こちらが勝訴した 向こうの家も 久美子の子供を 欲しがった 慰謝料とか 何とか金 とかは 全て 断った あとくされを失くすためだ お金より 大切なこと 山ほどあることを 知った。 

 車は 大きいトヨタの車 8人乗り これ 営業で 自家用車として 使っている 仕事は 探偵ではないけれど 何か 銀行とか信金とか不動産業とか クレジット会社とか 関係の信用の調査 みたいなこと 要するに 契約書の記載事項の確認と言うか その人が 実在しているのか とか 内容が 本当なのか とか 依頼内容に 添って 淡々と 仕事として 請け負っている 写真も撮る その車に 猫トイレ 砂 スコップ ビニール袋 餌 水 ペットボトル ダンボール箱に セットして 猫の小屋も 作って 「さあ 今日から ミーちゃんも 一人分の社員だよ」って言って 抱き上げた ニャーンと返事が かえってきた。

 信号待ちの時には 運転席の脇から ダッシュボードの上に 移り 通行人を 眺めていた 時々 前を 横切る女子高生たちが 「キャー ヤダー猫よ ホラ~ 見て みて~」とか 騒いで スマホで 写真 撮っていた 猫のミーちゃんは 得意顔で 笑って ポーズをとった。

 日曜日に 仕事に いった クライアントから至急の仕事だ ある戸建に住む男性の 信用調査だ 何か 大きい契約の本人確認だから 俺は 身を引き締めた チャイムを鳴らした 昼 在宅している筈だ 「どちらさん」少し 怖い声の男性 でてきた「あの~ 猫の飼い主 さがしているんですが~」とか 顔 みると 50才 くらい やり手の会社の社長風だ 猫のお腹を 軽く つねった 「ニャーン」鳴いてくれた  その男性は「いや~ うちは 猫 飼っていないし 他 当たってよ」と つれない  話に ならない ゴルフの素振りを しながら の話なので 「ご主人 ゴルフ 上手そう」と ゴルフの話題に 振りかえた やがて よくいくゴルフ場の話とか いろいろ よもやま話の中で 調べる肝心のところは 全て 押さえたので 「また このへん 来たら 寄ります」と丁寧にあいさつして その場 あとにした。  ミーちゃんの頭を なでて 車に 戻り 発進した レポートは 全て 埋まったし クライアントにも 褒められた お金は 翌日 振り込まれた 猫も役に 立つと思った。

 今 ミーちゃんは 鎌倉の お寺 に いる お塔婆は三千円で 毎年 奉納していて お経も 読んでもらっている 2月3日 節分の日 に 亡くなった 前の日 足に まとわりついて 何回も 自分の寝床に 連れていっても また 足に からみついていた ニャーン 目 クリクリしていて 頭 撫でたら 嬉しそうに また ニャーンと言った 尾 を 珍しく 立てて いつまでも 立ち去ること なかった 翌朝 ミーちゃんの6畳の部屋にいく 寝床の「猫小屋」のなかで スウスウ 寝息 たてている と思った 水と 餌 セットしたけれど もう 冷たく なっていたの わかった まるく なって やすらかに 眠っていたままだった 現実を 受け止めること できず しばらく そのままにした やがて 俺は 号泣した 固くなって 冷たくなって まるく寝ている ミーちゃん 「長いこと ありがとうさん お疲れさん 」労を ねぎらい 俺の自慢のカシミヤのマフラーを かけた そして ペット葬儀社に 電話した 「一番 高いのでお願いします」 次の日の昼間 お坊さんも来た 係員が 棺桶 持参して 祭壇つくり 本格的に やった 目 赤くした久美子が お焼香した 肩で泣いていた 近所の人も 順番にした お坊さんは 黙々と お経を読む お線香の煙が 部屋にこもり 誰かが 窓 開けたら スーと 空に 流れた 「20年も 長生きした 猫さんの葬式は 始めてです やすらかな 良い お顔 していらっしゃいます 」と言って 棺桶の中の ミーちゃんに 短剣を 持たせてくれた あの世に 旅立つ 時 悪いヤツ を 追い払うのだと言う みんなで お花を 棺桶の中に いれた 一杯 いれた もう一度 顔 見た 「バイバイ」と 笑った気がした。

 今年の春 桜が 咲き誇る 江の島が眼下に見えて 湘南の海原が 潮風を 運ぶ 高台の お寺 鎌倉のお寺に ミーちゃんに 逢いにいく 江ノ電の踏み切り 渡ると そこが 駐車場だ 富士山が 遠くに見える いいところだ 去年は お寺の住職に 言われた「ミーちゃんは 他の お友達と 仲良く 遊んでいますよ 今度 逢いにきたら 写真を あげて お線香 あげて 名前 呼ぶと ちゃんと きますよ きっと 喜びますよ 名前を 何回も 何回も 呼ぶんですよ」そう 言って 合掌した。  ミーちゃん 待っててね  逢いにいくからね。 

 

今年も お雛様が 勢ぞろいした だして 飾って 2日かかった 見にくる 訪問人が ワーワー キャーキャー すごいわ~ 毎日 大勢 くる おかりをつけましょ ♪♪ オルゴールの澄み切った音色が 響き渡る~ 3月3日まで 公開中 所有者は「娘」購入日は 40年前 東玉の作品 時価不明

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