№37 野毛山へ遠足
その日は 野毛山へ遠足の日だった
朝は 曇り空 電車に乗り
ポツリ ポツリ 雨になった
傘とか 合羽とか 雨具らしいもの
持っている子 親は 少なかった
昭和20年代の後半のころ
みんなが 貧しかった
右も 左も 前も 後ろも
みんなが 公平に 貧乏人だった
僕は お母さんと お婆ちゃんと
三人で参加した
お昼は 動物園の中の屋根がある
建物の中で 輪になって 稲荷寿司とか
海苔巻きとか 食べた
バナナも食べた
ゆで卵も食べた
小学生の一年生だった
お母さんも お婆ちゃんも 豪華な
着物だった
「そうだ 今度 いって見よう 」
野毛山は あるし
動物園は 今も あるし
「もしかしたら お昼 食べたところ
あの 大きな 建物 あるかも知れない」
そこにいって 目を瞑れば
お母さんに会える お婆ちゃんにも・・・。
渡り鳥の鴨たちのいる 川の風景 餌の魚がいる