熟年夫婦の在宅介護生活365日「胃ろう・気管切開・嚥下マヒ・糖尿病・認知症・」心臓は生体弁・人工血管・脾臓は摘出・それでも人生は一度限り・100才を目標に生きていきます。

日本百名山を完登したけれど・寝たきり要介護5の妻を介護しながら夫の寺ちゃんが描く、子供時代と青春時代、そして今。

№46 世界を動かすことより「人の心」に感動を与えよう と思います

  残された時間を数える

妻が ポツリとつぶやく

「あたし 死んで しまうのね」

僕は あわてて 首を 激しく 振る

「そんなこと ないよ 誰が言ったの」

妻が ベッドから そうと 手を さしのべてきた

僕は 両手で いとおしく 包み込み 軽く 力 込めた

それでも 痛いわ と言うほど 枯れた枝のような手だった

「ごめんね」見つめると 涙が あふれた

担当のナースさんが 体温チェックしていく

個室の窓から 東京湾を行きかう 大きい船が 見える

 

先日 主治医から「残念ですが・・」

余命を 告げられた

ショックだった

覚悟していたが 

あらゆる 抗生薬 投与した

もう 何も 無いと言う

妻の白血球も戦ったが 敗れた

日を重ねるごとに

やせ細っていく 

僕に できることは 偽りの言葉しか なかった

「大丈夫さ」「そのうち良くなるさ」

 

あと 何年かしたら 「新薬」が 認可されると言う

間に合わない

僕は 妻の頬の涙を 指で 拭った

ほのかな ぬくもりを 感じた

いつも 今日が ラストか と病院に向かう

仕事も 忙しい

会社には 多くの社員もいる

世の中の不条理を 知る

切ない それだけだ

 

帰りの車の中で

運転手に 悟られぬよう

目を閉じた

妻と知り合い 楽しかった恋愛時代を

まぶた に 写して 過ぎ去った日々を

両手で 掴み 取ろうとしたが

その時 

背広の携帯が 鳴った

着信メロディは タイムトゥセェイ~♪

病院からだった。

 

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