熟年夫婦の在宅介護生活365日「胃ろう・気管切開・嚥下マヒ・糖尿病・認知症・」心臓は生体弁・人工血管・脾臓は摘出・それでも人生は一度限り・100才を目標に生きていきます。

日本百名山を完登したけれど・寝たきり要介護5の妻を介護しながら夫の寺ちゃんが描く、子供時代と青春時代、そして今。

№40 いいのか 

僕は 彼女の家に 呼ばれた

「きみ~ うちの〇〇子を どうする気だ」

父親から メガネ越しに 言われた

「一緒に なりたいです」

ボソッ と言った

「そうか 大丈夫か 〇〇子は しっかりしているよ」

そう言って お茶を ぐいっと 飲んだ

「言っておくけど いいのか 知らないよ」

また お茶を 飲んだ

 

「あの~ 意味が わからないのですが」

僕は 言った

応接間に 父親と二人だ

母親と彼女は 居間で テレビ見ている

時々 笑い声が 聞こえた

「俺に 似て 何 するんでも 強いってことだ」

父親は 苦労して 今の 会社を つくった。

たいしたものだ。

 

「あ なんとか なると思います」

僕は 率直に 言った

「とりあえず うちの会社で 働け」

僕は「はい」と返事した

「一週間 務まったら その時 考えよう」

再び 「はい」と返事をした

 

父親の会社の 系列会社の ある現場に配属された

身分は伏せて バイト としてだ

将来の社長の娘の旦那に なるかも 知れない なんて

そんなことは なかった

軽く 甘く 考えていた

初日から 自分と同じ体重のもの カツがされた

鋳物工場で 真っ黒に なって 働いた

昼休み 顔が 真っ黒 くちのなかも 砂だらけ

食堂は たくましい 労働者が 大盛りご飯 笑いながら

仲間と食べていた

「あんちゃん 新顔か これ 食えよ」

となりの職人から からあげ を もらった

 

今でも 思い出す

「いいのか」

その義父は 今 天国から みている

 

いいのか 猫さん も いっている

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