熟年夫婦の在宅介護生活365日「胃ろう・気管切開・嚥下マヒ・糖尿病・認知症・」心臓は生体弁・人工血管・脾臓は摘出・それでも人生は一度限り・100才を目標に生きていきます。

日本百名山を完登したけれど・寝たきり要介護5の妻を介護しながら夫の寺ちゃんが描く、子供時代と青春時代、そして今。

作品№1 発表日・2015.12.3 「つらら」 原作者・Maikal Fujio

つらら

霜焼けの両手はがさがさ ひび割れ

お湯を張った 錆びたブリキ製のバケツ

そうと 先っぽから 漬ける

滲みる 痛い!

「お母さん 痛いよ!  滲みるよ」

僕は 鼻水すすりながら 喚いた

頭に げんこつが 飛んできた

「お母さん 痛いよ!  痛い」

四人兄弟の三番目の僕

トタン屋根で トタンが錆びていた

穴が 星屑みたいに 見える

月夜は それが満天の星空に変わり 空想の世界が 広がる

屋根のトタンは 沢山の漬物石で 押さえてある

そのうちの一つが 飛びっきり でかいのが

台風の時 大雨と共に 僕の顔の傍に 落下した

ずぶ濡れの僕は 泣き叫んだ

隣に住む 母の姉の息子に 抱き抱えられ

助け出された

腹が減ると つらら を ガリガリ かじった

霜焼けの手に ツルツル滑る つらら 抱えて

鼻水垂らして かじった

家に はいっても 外と同じだった

夕方 お父さんが リヤカー引いて 帰ってきた

白い 温かい ご飯 湯気に 手をかざした

お父さんが「鯵の煮つけ」を一人 づつに

「骨に気をつけてな 」と お皿に 盛り付けた

僕は のどに 骨 ひっかけた

でも かまわず お代わりして 平らげた

お皿に 残った 尾かしら付きの骨を

お茶碗に 汁ごと移し替えて 薬缶の湯を

いれて 啜った 「・・・・・」

黙々と 全部 飲みほした

練炭火鉢の上に 金網載せて

尾頭付きの鯵の骨 焼いて 全部 食べた。